読書初心者の僕が好きな数少ない作家さんの一人、奥田英朗さんの家日和を読んだので感想を綴っていきたいと思います。
肩の力が抜けていてほっこりした気持ちになれるのはとても心地いいです。
『家日和』を読んで思った率直な感想
読んでいて、「あれ?こんなありふれたこと、小説にするほどのことかい?」とまず思いました。
現代の風刺と言いましょうか、ありふれた家族・家庭を取り上げ、その中で起こる様々な事象を覗き見る感覚。
前回の池井戸潤さんの七つの会議などは、その展開に意識が引かれる感覚だったのに対し、家日和は「wあるある。お!やっぱこんなもんだよなぁ。。」と共感と小さな展開が原動力となる感じ。
小粒な展開が脱力しほっこりしたまま読み進めてしまう秘密になっているのかなと思いました。
また、1話目を読み終え、「あれ?これってそれぞれの章が最終的につながるのかな?」などと思いましたがそんなこともなく。。
いい意味で期待を裏切れつつもほっこりと読む側を魅了する何かがありました。
奥田英朗さんの作品は伊良部シリーズで初めて知り、その面白さに魅力を感じていました。
新作の向田理髪店も読みたいものです。。(実家が理髪店なので)
『家日和』のアマゾンでの評価
口コミ1 日常をテーマとした秀作。おもしろい。
投稿者:aaa0042
評価:[star rating="5"]
様々な立場の人の日常が、軽いタッチで描かれている短編集。
その中で秀逸だったのは、インターネットオークションをテーマとした「サニーディ」。オークションにのめりこんでいく主婦の心情が手に取るようにわかった。自分もオークションを活用するが、似たような気持ちになる。
ごくありふれた人物の、別に何ということもない日常を題材として書かれているだけに、登場人物に共感する読者も多いのではないだろうか。いつもながら、奥田氏の手法はすばらしい。
口コミ2 家は誰のもの?
投稿者:なおっち
評価:[star rating="5"]
ネットオークションにはまる専業主婦。
会社が倒産し、主夫となる営業マン。
妻が家を出て自分の趣味をいかした部屋つくりをする夫。
在宅でDMの宛名打ちの内職をし、家にやってきた若い営業マンとの
淫らな夢におぼれる主婦。
仕事を変わってばかりの夫を持つイラストレーターの妻。
「ロハス」に凝り始めた妻を持つ小説家の夫。
ちょっとずれていて、でも愛情がないわけでなく…。
家とはずっと外にいた夫の王国か。ずっと家にいた妻の城か。
インターネットにはまる主婦を描いた「サニー・デイ」には
共感しまくり。
ネットオークションに出品し、落札され、良い評価をもらえると
マジで嬉しいし、
評価付かなかったりするとマジでへこむ。
まぁ、この主婦のように綺麗にはならないけどさ。
はまってしまう恐ろしさはあるけれど、その魔力はすごいのである(笑)
男の側からすると
「家においでよ」の自分の趣味を追及しようとする男の気持ちも良く分かるし、
「ここが青山」の主夫業に目覚めてしまった男の気持ちも良く分かるんだな。
自分は一人暮らしなので、この二人の
たとえば、インテリアに凝ったり、自分の趣味のものを気兼ねなく
集めたり配置したり、
料理に目覚めてしまったり、選択掃除が楽しくなったり、
そんな毎日に共感を覚えるんだけど、
もし結婚したりすると
やはり家は主婦のものになってしまうんだろうか?
奥田さんの新作だけど、
本当にこちらの微妙な心理をうまく突いた面白い小気味のいい小説だった。
口コミ3 妻と玄米御飯がぶっちぎり
投稿者:ズラウスキ
評価:[star rating="4"]
「妻と玄米御飯」がぶっちぎりで面白かった。
近所で見かける、小型の洋犬を乳母車に乗せて散歩しているセレブもどきオバサンを思い出した。
ロハスは気分も体調もいい事はいいと、全否定していないところもリアリティがある。
ところで奥田さん、ロハスな御夫婦って実在してません?
大丈夫ですか(笑
口コミ4 今頃になって 読んだ
投稿者:tantanmiitako
評価:[star rating="4"]
ずっと「ほしい物リスト」に入れておいたのは苦手な文庫本。
いつの間にか数年が経って。単行本に気がついた。きれいな古本が届いた。
「家日和(いえびより)」の文字が浮き上がっていて表紙が凝っていた。
帯には 家庭発信 6つのドラマ とあり
ずっと家族からしあわせをもらっていた・・・・・「サニーディ」
おれって家にいるほうが向いているかも・・・・・「ここが青山」
理想の部屋が、今日出来上がるのだ・・・・・・「家においでよ」
別の人生もあったかな・・・・・「グレープフルーツモンスター」
地味でも安定した日常を望んでいる・・・・・・「夫とカーテン」
絶対にこの輪に入ってはいけない・・・・・・・「麦と玄米御飯」
順番にパッパッと読んでいきました。とても読みやすかったです。
「サニーディ」はオークションに出品したことがあり、理解しやすく
途中うまくいくだろうかとハラハラしました。最後はぷつんと終わって
肩透かしくったみたい。この先如何なるのかな。
「ここが青山」失業中でも専業主夫やって明るい。「人間至る処青山在り」とは
「人間(じんかん)」は世の中のことで、「青山(せいざん)」は墓場のこととは
知らずして「世の中、どこにでも骨を埋める場所がある」へぇーとなりました。
読んでいて一番面白かったのは「家においでよ」。わくわくしながら一緒に家具他の
買い物に付き合っているみたい。ロックのことは知らないけど。いいなぁ。
こういうのって。居心地のいい趣味的部屋ってかんじ。会社の同僚さん達ほんと
しあわせだよねって。会社に行くのも仕事するのも元気になりそう。
「妻と玄米御飯」のなか「~犬は飼い主に似るとはよく言ったもので、洋犬でも、
康夫の人見知りする性格を受け継いでいるようだ。」遠回りしてワンは康夫の背中に
隠れちゃう。可愛い。全編通して主人公はあくまで受け身的人生を謳歌とまでは
いかなくても日常を楽しむ術を知っているような。そしてまわりとの協調性というものが
生きる上で生活していく上で何とも貴重と感じさせていただいたような。
こういう風にあったかさの滲み出た小説ってめずらしかった。
奥田英朗は直木賞作家。今まで一冊も読んだことなくて。後で検索してみましょ。
口コミ5 パパの会社がトウサンしてね
投稿者:みやさま
評価:[star rating="5"]
どこにでもありそうな一見フツウの家庭におけるフツウの出来事が、奥田英朗の手にかかると、これほどまでに面白いものになるのかと本当に感心してしまいます。
ネットオークションにはまる42歳主婦、会社が倒産し主夫としての生活に充実を感じる36歳男性、妻が出て行った後のがらんとした部屋を自分好みに変え久々の独身生活を謳歌する38歳営業マン、家で内職するうち出会った若い男に興奮を覚える39歳専業主婦、行動力で突っ走る夫を持つもうすぐ34歳のイラストレーターの妻、ロハスにはまる妻を持つ42歳N木賞作家。
どの作品も主人公らの心の動きが「確かにそうだよな」と思える自然な描写で、この違和感ない自然な感じというのが実はすごく難しいのだと思うのですが、奥田英朗はその辺の力加減が実に巧いです。
いずれの作品もユーモアが効いていて読了感がとても良いです。
私のお気に入りは「ここが青山」と「家においでよ」。
いずれも30代後半の男性が主人公ですが、会社でばりばりと働く場面ではなく、家庭でのそれぞれの楽しみ方が描かれています。
「ここが青山」では、会社の倒産により否応なく家庭で主夫をするようになる男性のお話です。
元々仕事を続けたかった妻が働きに出ることになり、家庭で子どもの弁当を作ったりすることに喜びを感じる夫が主夫となることが結果的にこの夫婦には向いていたのですが、夫は外、妻は家といういまだになくならない古い考えから、まわりから妙に同情されて困ってしまう主人公。
無邪気な子どもが近所の主婦らに「パパの会社がトウサンしてね」と言って、まわりの大人が凍り付く場面など、思わず笑みがこぼれます。
しかし、この家庭では妻の存在が大きいです。外向的な性格で、無礼な警官と喧嘩したりとバイタリティにあふれており、この妻となら主夫としてやっていけるかもと思ってしまいます。
「家においでよ」では、妻が家具と一緒に出て行った後のがらんとした空間を自分色に染めていく楽しさ。
妻に遠慮してできなかったことを思う存分できる開放感を味わうサラリーマンの気持ちが非常によく分かり、そこが同僚たちのオアシスになるのもうなずけます。
小ぶりながら奥田英朗の自然なセンスがひかる良質な短編集です。
まとめ!『家日和』
あ、やはり本を読んだ後にレビューを読むのは面白いですね。
僕はあまりゲームはしないのですが、攻略本を購入する人の気持ちがわかったような気がします。
本を読み、自分がどう思うか、そして他の人がどう思っているのか。
奥田英朗ワールド、また楽しみたいと思える作品でした。